~寝ても取れない眼の疲れ~
「眼が疲れる」「眼が重い」日常的にこんな症状に悩まされている方も多いのではないでしょうか?ではどんな方が眼が疲れやすいのでしょう?パッと思いつくのはパソコン作業をされるデスクワークの方などが思い浮かぶかもしれませんが、最近では若い方や、スポーツを楽しんでいる方でも目の疲れに悩まされているか方がいます。
眼精疲労とは:視作業(眼を使う仕事)を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態をいいます。 (日本眼科学会)
疲れ眼と眼精疲労の違い
人の情報入力の80%を占めていると言われている眼は、朝起きてから眠るまで活動しています。近くを見たり遠くをみたり酷使している眼は、ぼやけたりかすんで見えたりするときあります。そのほかにも眼が重い、眼の充血、眼が乾燥しているなど、眼のトラブルは多くの方が経験していると思います。
疲れ眼よりも症状が進行した状態が眼精疲労
「眼が疲れる」「眼が痛い・重い」といった症状がでたときに休憩や、睡眠によって症状が治る場合は『疲れ眼』です。しかし休息しても疲れ眼の症状が改善せず、頭痛・肩こり・吐き気、めまいなどその症状が続く場合、『眼精疲労』と医学的には区別しています。
眼精疲労のメカニズム
では眼精疲労のメカニズムを考えていく上でここで質問です。
「眼が疲れた」という時の「眼」とは実際どの部分の事をさしているのでしょうか。目の黒目である角膜でしょうか、白目である強膜でしょうか、瞼の奥でしょうか。改めて聞かれるとはっきりと答えられない方が多いのではないでしょうか。
勘のいい方はもうわかったかもしれませんが、私たちが眼が疲れている時、具体的には眼のピントを合わせるための「筋肉」が疲れています。痛みを伴う場合はその筋肉が傷んでいる場合もあり、頭痛などがみられる事もあります。このような状態はかなり眼精疲労が進んでいるので注意が必要です。
眼のピントを合わせる筋肉
眼のピントを合わせる筋肉は大きく二つの種類に分けられます。
①毛様体筋(ヘルムホルツ理論)
眼科医療で主流なのは毛様体筋によってピントを調整するというヘルムホルツ理論という考え方です。
ものを見る際に、毛様体筋が、緊張したり、緩んだりすることで、水晶体の厚さを調節してピントを合わせています。起きている間はずっと眼を開けていますから、毛様体筋は絶えず働いています。この毛様体筋は、自律神経がつかさどる不随意筋のひとつで、無意識に動いています。このように眼のピントを合わせる毛様体筋を酷使する事で眼が疲れます。
部屋の奥にある時計や、窓の外など、遠くを見るときは、毛様体筋の緊張がゆるみます。逆に、パソコンなど近くのものを見るときには、毛様体筋が緊張します。また、スマートフォンなどパソコンよりも手元の近くのものを見ようとすると、毛様体筋がさらに緊張します。
デスクワークによるパソコン作業、スマートフォンが当たり前になった現代社会では、毛様体筋がゆるむことが少なく、緊張状態が持続していることが多いため、毛様体筋に大きな負担がかかり疲れ目の症状を持った方が多くなってきています。
②6つの外眼筋(ベイツ理論)
視力トレーニングなどで主流なのは外眼筋による眼軸の変化によってピントを調整するというベイツ理論という考え方です。
人間の眼は、上下・左右、斜めといろいろな方向に動かす事ができますが、これらの動きは、上記の図のように6つの筋肉によって動かされています。
両目を無意識に同じ方向に向けていられるのも、眼球の周囲にあるこれら6つの外眼筋を自律神経がうまくコントロールしているからです。このように、外眼筋が緊張したりゆるんだりする事で含有の奥行き(眼軸)を加減し、ピントの調整をっています。これらの筋肉は眼球の奥の方にあるため、「目の奥が重い」「目の奥が痛い」などの症状へ繋がります。筋肉を適度に休ませることで酸化ストレスはやわらぎますが、酷使し続ければ強い疲労感で苦痛を感じるようになります。
眼精疲労を引き起こす要因である筋肉を酷使してしまう原因
①デスクワークなどの作業による眼の酷使
これは感覚的に理解しやすいと思いますが、長時間パソコンの画面を見続けたり、スマートフォンの画面を長時間覗き込んでいる事が眼精疲労を引き起こします。特に作業に集中していると人はまばたきの回数が減るため眼が乾燥してきます。 このように現代社会では視野を狭くする生活習慣が身についてしまっているので、本来なら自由に動けるはずの眼の筋肉が動かないまま固まってしまってしまいます。椅子に長時間座っていると腰や背中が固くなって疲れてくるのと似ています。
②眼のピント調整異常
近視、遠視、乱視といったピント調整異常により視界がぼやけた状態は眼の筋肉の緊張を招き、眼精疲労に繋がります。 加齢に伴った老眼や、コンタクトや眼鏡の度数が合っていない場合も無理にピントを合わせようとして眼精疲労に繋がります。
③ストレスや心身の疲労が招く自律神経の乱れ
ストレスや心身の疲労は自立神経の乱れを引き起こし、その影響が眼にも現れます。眼のピント調整には自律神経が深く関係しています。下の図のように、遠くを見るときには交感神経が優位になります。交感神経は、活動しているときに優位になり、眼や身体を緊張させるように働きます。逆に近くを見るときには目や身体をリラックスさせる副交感神経が優位になります。本来、仕事をするときには交感神経が優位になることが正常ですが、デスクワークなどでパソコンを操作していると、近くのものを見ることになるため副交感神経が優位になります。このような矛盾も自律神経のバランスを崩し眼精疲労に繋がります。
眼精疲労をやっつけるセルフケア
では最後に自身で手軽に行えるセルフケアを紹介したいと思います。ここでは眼の運動とツボの刺激をお伝えします。これらは仕事中の合間などでも手軽に行えるものとなっていますので是非行ってみて下さい。
眼だけで行う眼球運動
眼精疲労の原因として、デスクワークなどで長時間同じものを見続けることにより、眼の筋肉がこり固まり、疲労物資がたまってしまいます。眼球運動を行うことで、眼のストレッチなどで血行が促され、疲れを取り除く事が出来ます。
①眼の上下左右、回転運動 回数:左右10回ずつ
方法:息を吸って、吐きながら眼球を右回りに回転させる。大きく回す事を意識しながら行うのがポイントです。次に左回りに回転させます。回しづらい方向がある場合は、そちらを多めに回すと良いです。頭、首を動かさず眼だけを動かすように注意して下さい。
②眼の収縮と弛緩 回数:数回
眼をぎゅっと閉じたり、開いたりを繰り返すことで涙腺が刺激され眼球が潤うとともに血流が活性化されます。
方法:両眼を閉じ、ぎゅっと眼もとに力を入れます。次に軽く眼を閉じてゆるめます。この際、顔や全身の力をゆるめるのがポイントです。
③遠近法 回数:2セットを1回
近くと遠くを交互に見ることで、眼の筋肉のコリがほぐれ、眼のピント調整機能が高まります。
方法:顔から30cm前の位置で、手の平を広げます。リラックスして深い呼吸をしながら手のシワにピントを合わせた状態でじっと見つめます。1分間経ったら眼を離して、まばたきをし緊張をほぐして下さい。
次に5m以上離れたものにピントを合わせてじっと見つめます。同じように1分経ったら眼を離して眼の緊張をほぐします。
これらを交互に2回程繰り返したら軽く眼を閉じてリラックスして下さい。
眼のツボ刺激
3~5kg(指先の爪の部分が白くなる程度)の強さで10秒間を5回程度押して下さい。
①眼窩の内側
特に腕の疲れからくる眼精疲労に効果があります。パソコン作業などの合間に刺激することで、腕の血行が良くなり軽くなるのが実感できます。
方法:両手の指で目頭のあたりをつまみます。息を吸って吐きながら押しもみます。この際、鼻骨をしっかりつまむようなイメージで少し強めに刺激をします。少しづつ指の位置をずらしながら周辺をくまなく行います。最後はゆったり呼吸をしながらゆるめます。
②こめかみ
血の巡りが良くなり、眼に溜まった疲労物質が流れます。眼に光を取り入れやすくなるため、視界がクッキリしてきます。
方法:親指でこめかみを押さえます。次に500円玉くらいの範囲を、円を描くようにして強めに刺激します。最後はゆったり呼吸をしながらゆるめて下さい。
この他にも眼を温めたり、仕事中も適度な休憩をはさみ、十分な睡眠取ることが大切です。運動や趣味などでストレスを発散させることで、眼精疲労を緩和できます。
是非、動画を見てやってみて下さい。